三番煎じ

お酒と遠征と読書が好きなオタクの備忘録

2026年1月4日私の中のプロレスが終った日【WRESTLE KINGDOM 20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退】

棚橋のゴールを決めました。

疲れないし、落ち込まないし、あきらめないけれど……、
あと1年2カ月、全力で走りますんで、
新日本プロレスをよろしくお願いいたします!
(2024.10.14 両国国技館)

引用:棚橋弘至ファイナルロード | 棚橋弘至引退カウントダウン特設サイト

 

この日、私は棚橋選手のデビュー25周年記念で久しぶりに新日本プロレスの試合を見に行った。まさか引退発表があるとは思っておらず、呆然として泣き過ぎてその日の試合の内容は全く覚えてない。

 

私がプロレスを観に行くようになったのはある対談がきっかけだった。

たまたま本屋で目に入ったananに作家の西加奈子先生と新日本プロレスの棚橋弘至選手の対談が載っていたのだ。以前から西加奈子先生のファンで手に取ったが棚橋選手については知らなかった。

体が大きくて金髪のロン毛。正直第一印象は悪かった。だがその対談では、写真を見ればあの西先生が少女のように目を輝かせながら棚橋選手を見つめ、文面からは尊敬と憧れが見て取れた。西先生の作品にはよくプロレスが出てくるし、直木賞を受賞した際のスピーチでプロレスから勇気を貰っていると言っていたのはとても有名なエピソードだが、自分とは無縁過ぎてあまり気に留めていなかった。

その対談の際、西先生が持参していたある本にはビッシリと付箋が付いていた。棚橋弘至著「 棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」だ。

対談を読み終えてすぐ本屋で購入し一気に読んだ。西先生が何故こんなにもプロレスと棚橋弘至に惹かれるのか気になったからだ。内容は棚橋選手の半生と新日本プロレスの立て直しにどう貢献したかだったが、そこには棚橋選手のプロレスと新日本プロレスへの愛に満ちていた。

これほどまでにこの人達を魅了するプロレスを観てみたくなった。

当時プロレスのプの字もわからないままプレイガイドで空席があったからという理由のみでチケットを購入したのが2015年8月14日に開催された「G1CLIMAX 25」Aブロックの最終戦だった。

プロレスにシングルマッチ以外があるのも驚いたし、正直デカい男がど突き合ってるだけで何が面白いだと思ってしまった。

メインイベントを見るまでは。

その日のメインは 6勝2敗同士の棚橋弘至とAJスタイルズがAブロック1位の座をかけて戦う試合だった。今まで色んな芝居やライブや映画やお笑い、あらゆるエンターテイメントに触れてきたがそれを全て凝縮したような、体で奏でるオーケストラみたいな試合だった。気づいたら大声を上げて応援し棚橋選手が勝利したときは一緒に観に行った姉と抱き合って喜んだ。

それからどっぷりプロレスと、何よりも棚橋選手にのめり込んでいった。

北海道から沖縄まで日本全国飛び回った。棚橋選手は知れば知るほどに魅力的な人で、天然ボケっぽい可愛らしい人柄と裏腹に彼のプロレスに対する真摯な態度が好きだった。ビッグマッチの前の前哨戦でも手を抜いてるのを見たことがないし、試合後コメントも毎回次が楽しみになるような言葉を沢山くれた。そして丁寧で見る人を惹きつける彼の試合が大好きだった。

もう推し活なんて生ぬるい言葉じゃ足りないくらい生活全てが棚橋選手を中心に回っていた。

「推しを応援する」とは何たるかを私は全て棚橋選手から教わった。

そんな生活を何年も続けていた。私生活を顧みず狂ったように観戦に行っていたので家族からは非難轟々だったし、そして何より文章にするには大変恥ずかしいのだが認知をとった事でつけ上がり、いつしか見に行くというより会いにいくような感覚になっていた。他のファンと自分比べて落ち込んだ事もあったし昔だったらこう対応してくれてたなどと過去の自分と比べたりもしていた。いつしか”嬉しい楽しい大好き”だけの感情じゃなくなって、もう初めてプロレスを観た時のあの感動と興奮を思い出せなくなっていた。そして気づけば会場から足が遠のいていた。棚橋選手は変わらずプロレスを続けてくれていたのに。

 

そんな中、久々に行った2024.10.14 両国国技館で引退発表があった。社長になってもプロレスを続けていてくれていたけど年々膝の調子が悪くなっていってるのは素人目に見ても明らかだったし、近年は試合を観てると辛くなる瞬間もあった。

元々社長就任する条件が社長業に専念することだったのを考えると随分長く時間をくれたとは思う。自分から勝手に離れたのに、引退の悲しみと衝撃は薄れず心の準備は引退試合当日になっても出来なかった。

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2026.1.4、当日満員の会場を見て仲間内で棚橋はソロコンでドームを満員に出来ると笑い話もしていたが、ずっと目標に掲げていたドーム満員を引退試合で達成するとはどこまでもドラマを持っている男だと思った。

引退試合、棚橋弘至vsオカダ・カズチカ。

今まで二人の試合は何度も見てきたが、今までの棚橋対オカダをギュッと凝縮したような素晴らしい試合だったと思う。動きも良かった。きっと痛み止めいっぱい打ったんだろうな。3カウントで棚橋選手が負けた時はやめて欲しくないのに少しだけホッとした気持ちになって不思議だった。

私が初めて引退セレモニーを見たのはS・S・マシン選手の引退試合で10カウントゴングを聞いた時、棚橋選手の引退のゴングを私はどんな気持ちで聞くんだろうとずっと考えていた。結局鳴り止まなければいいのにと泣きながら選手ではなくなっていく棚橋弘至を見つめることしか出来なかった。

これから棚橋社長として新日本プロレスを作り上げていくと思うとどんな新日本プロレスを見せてくれるのか、それはとても楽しみだ。そして社長としてはまだ3歳の棚橋社長を自分もできる限り応援したいと思っている。でも棚橋選手を応援していた時の喜怒哀楽の沸点を全て超えるような、心の底から気持ちが溢れ出て苦しくなるようなプロレス体験はもう出来ないと確信している。だから2026.1.4は私の中のプロレスが終わった日だ。

棚橋弘至という一つの時代を少しの間だけど一緒に生きて応援出来たことを本当に嬉しく光栄に思うし私のちっぽけな人生の唯一の自慢かもしれない。

とりあえずささやかだけど棚橋社長応援の一つとして出来ること、次の給料入ったらブシロードの株主になろうと思っています。